利用者位置から検索する
バスナビゲーションシステムに関する研究
鴫原 育子 ・ 山田 稔 ・ 斎藤 修 ・ 兼子 恭平

開発物語

1.研究の背景

① バス利用者の減少

国土交通省関東運輸局の発表によると、モータリゼーション(車社会化)社会では、バス利用者の減少を招いています。その上、交通渋滞がバスの定時運行を困難になっていて、これもバスの利用者離れを増幅させている一因です。地方都市のバス問題として、本数が少ない上に時刻表通りに来ないという問題を抱えているところが多く、バス利用者の減少は止まることを知らない状態が続いています。このことはバス会社の経営を圧迫するだけでなく、結果的に本数の削減や路線廃止を招くことに繋がり、地域公共交通の存在意義を低下させています。

② バス会社と自治体の現状と将来のバス利用者像

国土交通省関東運輸局の調査によると全国の乗合バス運送人員は、この20年間で30%以上減少という結果が報告されています。また、運転士の高齢化により人員確保の問題も起こっています。自治体でも、高齢化社会に向かって公共交通は地域住民にとって重要な交通手段であると考え、今後は団塊の世代が自主的に運転の断念をする者も多くなると思うので、通常の返納者数を加速度的に増加させると予測されます。その足としてもバスは公共交通の要となる存在価値がありますが 現在は赤字路線の補填や、新たな設備補修等、自治体毎に予算化しバスの維持に取り組んだ事例は少ないのです。また、高齢化の増えるスピードと財政の減額の狭間で、出来ることが限られており、将来まで予算が取れるという保証がないのが現状です。

その一方で近年、若者の所得が下がっていることやお金の使い方の変化もあり、自家用車が絶対に必要という考え方から少し変化が出ています。若者の車離れは加速すると考えられ、現実このライフスタイルが地方にも広がりつつあります。それに伴いバスでの移動も重要視されると想定。近年では、外国人旅行者が増えていることや、2020年の東京オリンピックの開催等、今後は自家用車を使えない旅行者が増えることも予測され、昔では考えられなかったカーシェアリングも近年進みつつあります。このことで、地方であっても自家用車を持たない生活が可能となり、普段は公共交通を使い、特別に車を使いたい時にはカーシェアリングを利用するという選択が考えられると思いました。

このように将来的にはバス需要が高まると予想されるものの団塊の世代が運転免許の返還をする年齢に達する10年後、15年後まで、バス路線の現状維持することが直面する課題であります。そのためには若者や旅行者のように今までバスを使わなかった人でもバスが使いやすいと思わせる、そういう情報提供の仕組みを作ることが効果的と考えられます。

③ 利用者の知りたい情報

平成18年度に国土交通省が実地した調査によると利用者の知りたい情報は、①乗継経路、②乗継バスの時刻、③所有時間、④リアルタイムの運行情報、⑤到着予想時刻、⑥バスの現在位置、の計6個でした。

バス社会は、路線図や時刻表をホームページで検索出来るようにし、これらの要望に応えられるように努力しています。バスロケーションシステム(以下バスロケシステム)を導入しているバス会社もありますが、現在のバスロケシステムは設備費や運用維持費が高額です。また、必ずしも使いやすさの面で十分な検討がなされているとは言い難いと思います。

利用者の知りたい情報提供が少ない場合、バス利用の不安要素の大きいものは「バスがいつ来るのか」「行ってしまったのではないか」と述べています。また、お客様からバス会社への電話での問い合わせを減少させる情報の積極的提供への取り組みは「全ての人のバリアフリー」の実現のために重要です。特に情報面のバリアが大きく、交通機関選択の土壌にすら上がっていない状態が生まれていると説きました。

④ 既存の公共交通情報システムのUI

既存のバスロケシステムは、リアルタイムでバスの接近情報が分かるシステムであり、大都市だけでなく地方都志にも普及を見せています。しかしバス停での情報提供を基本としているため、導入後の維持には多くの問題があるのです。

WEB等で提供するバスロケシステムは鳥取大学が開発した公共交通機関利用援助システムの「バスネット」や鯖江市のオープンデータを利用したつつじバスの「バスどこサービス」等がある。また、スマートフォン用の専用アプリに提示するものとして「東京都内のバスルート案内」や「全国バス乗り換え案内・路線図」等がある。これらが提供している情報は、主に路線、運行情報でありますが、バスの運行情報画面までたどり着くのに多くの操作が要求されます。また、時刻表情報が無いものも多くありました。特にスマートフォンアプリでは運行情報がないものが多いです。

乗換案内の路線情報ウェブサービス代表としての「NAVITIME」はそもそものコンセプトが鉄道乗換案内でした。バスに比べて鉄道は路線数が少なく駅名を知っている人も多いため、そのUIは一般に出発地と目的地を入力し、乗継ぎを含めた経路として提示される。行程は当日の時刻表に基づいて探索されるため、時刻表どおりに運行されることが前提となっています。

次のページへ

開発物語

ページトップへ